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HACCP(ハサップ)とは?
小規模事業者向け導入ステップを簡単に解説

HACCPとは、すべての食品事業者に対して義務化されている衛生管理制度です。食品工場などの大規模事業者だけではなく、個人経営や従業員50名以下の飲食店もHACCP義務化の対象となっています。

この記事では、HACCPをこれから導入する小規模事業者に向けて、HACCPの基本を簡単に解説します。

HACCPとは

HACCPを一言で表すと「安全な食品を消費者に届けるための食品衛生管理手法」といえます。

これまで食品の安全性は、最終製品の抜き取り検査により確認していました。しかし、抜き取り検査ではすべての製品が安全であることは保証できません。そこでHACCPでは、微生物や異物の混入などが起こり得る重要な工程を管理することで、全製品の安全性を確保しています。

HACCPに沿った食品衛生管理は、食品衛生法第51条に基づいてすべての食品関連事業者に課されている義務です。以下の条文の二が、HACCPを示しています。

厚生労働大臣は、営業の施設の衛生的な管理その他公衆衛生上必要な措置について、厚生労働省令で、次に掲げる事項に関する基準を定めるものとする。
一 施設の内外の清潔保持、ねずみ及び昆虫の駆除その他一般的な衛生管理に関すること。
二 食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するための取組に関すること
引用:食品衛生法

HACCPに沿った食品衛生管理には、ふたつの区分があります。ひとつは従業員50名以上の大規模事業者を対象とする「HACCPに基づく衛生管理」、もうひとつが従業員50名未満の小規模事業者を対象とする「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」です。かつて前者は「基準A」、後者は「基準B」と呼ばれていましたが、食品衛生法の改正により名称が変更されています。

衛生管理の「7原則12手順」とは?

「7原則12手順」とは、大規模事業者がHACCP導入に用いる手順のことです。小規模事業者も「7原則12手順」の考え方に基づいてHACCPを導入していくため、簡単に確認しておきましょう。

「7原則12手順」の詳細は次のとおりです。
手順1 HACCPのチーム編成
手順2 製品説明書の作成
手順3 意図する用途及び対象となる消費者の確認
手順4 製造工程一覧図の作成
手順5 製造工程一覧図の現場確認
手順6(原則1) 危害要因分析の実施
手順7(原則2) 重要管理点の決定
手順8(原則3) 管理基準の設定
手順9(原則4) モニタリング方法の設定
手順10(原則5) 改善措置の設定
手順11(原則6) 検証方法の設定
手順12(原則7) 記録と保存方法の設定
手順1~5は、原則1~7を進めるための準備に当たります。製品の仕様や特性、製造工程の流れをまとめ、現場との相違がないかを確認します。

手順6~12は、HACCPの要となる7つの原則でもある項目です。まずは、食品の製造上で起こり得る危害要因(食品汚染や異物混入)を抽出します。次に危害要因を除去、低減するために重要な工程(重要管理点)とその管理基準、基準の測定方法などを設定します。事前に、管理基準が守られなかった場合の改善方法を決めておくことも大切です。

これらの計画は定期的に有効性を確認し、必要があれば修正します。問題が発生した際に状況を確認できるよう、管理記録を保存することも求められます。

HACCP義務化のメリット

HACCP導入により事業者が得られる主なメリットは、次のとおりです。

・食品の安心安全
・従業員の食品衛生管理に対する意識向上
・生産効率アップ

HACCPでは製品の「危害要因」を分析し、防止に効果的な「重要管理点」をモニタリングすることで食品の安全性を高めます。

HACCPでの危害要因とは、微生物や化学物質、異物など健康に悪影響を与える可能性のある物質のことです。危害要因を除去、低減できる製造上の工程を重要管理点と呼びます。たとえば、食品に危害要因である食中毒菌が付着している可能性があれば、加熱工程が重要管理点のひとつといえます。

HACCPに基づいた食品衛生管理は、従業員全員で取り組むものです。そのため、従業員一人ひとりの食品衛生管理に対する意識が高まります。さらに、HACCP導入に伴い作成する製造工程一覧図は、生産工程の見直しにも役立ちます。生産性がアップすると、食品事故が起こるリスクも低減されるでしょう。

そのほか、クレームや事故の発生時にも迅速に対応できる、自社の衛生管理をPRできるなど、HACCP導入にはさまざまなメリットがあります。

HACCP導入手順

飲食店などの小規模事業者がHACCPを導入する際は、以下の手順に沿って進めましょう。

1.衛生管理計画書の作成
2.計画に基づく実施
3.確認と記録

それぞれの手順について詳しく説明します。

1.衛生管理計画書の作成

衛生管理計画書には「一般的な衛生管理」と「HACCPに沿った衛生管理」のふたつがあります。

「一般的な衛生管理」とは、食品製造の基礎となる衛生管理のことです。計画書には、原材料受け入れ時の衛生管理、冷蔵・冷凍庫の温度確認、交差汚染・二次汚染の防止、従業員の健康・衛生管理といった項目を加えることが一般的です。

「HACCPに沿った衛生管理」では、取り扱う食品やメニューを以下の3つのグループに分けて考えます。

第1グループ:非加熱のもの(冷蔵品を冷たい状態で提供)
第2グループ:加熱するもの(冷蔵品を加熱して熱い状態で提供、または加熱後に高温で保管するもの)
第3グループ:加熱後冷却し再加熱するもの、または加熱後冷却するもの

それぞれのグループについて、重要管理点とそのチェック方法を設定しましょう。たとえば、居酒屋のメニューでは次のようにグループ分けし、重要管理点のチェック方法を設定します。

  メニュー チェック方法
第1グループ 刺身、冷奴 冷蔵庫から取り出したらすぐに提供する
冷蔵庫の温度を確認する
第2グループ 唐揚げ、焼き魚 調理中の火の強さや時間、見た目、中心温度を確認する
仕上がりの肉汁の色、食材の弾力を確認する
第3グループ たれ 加熱後は速やかに冷却する
再加熱時の見た目、温度を確認する

2.計画に基づく実施

衛生管理計画書の内容を実際に運用します。その際、チェック方法などを詳しく記載した手順書を作成しておくと、担当者が変わった場合もスムーズに運用できて便利です。

3.確認と記録

HACCPにおいて記録はとても重要です。重要管理点を監視し、記録することで事故を未然に防げます。さらに、万が一の事故発生時には、適切な衛生管理をしていた証拠にもなります。

まとめ

HACCP導入は一見難しそうに思えるかもしれません。人手の少ない小規模事業者では、計画書を作成したり運用したりする余裕もあまりないでしょう。しかしHACCP導入はすべての食品事業者の義務であるため、まずは負担になりすぎない程度の衛生管理から取り入れてください。

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